アイドルは声が曲にちょっと馴染まないくらいがちょうどいいと思う話。~EBiDANのいくつかのグループの曲を聴いていて思ったこと~
少し前に原因は自分にある。のアーティストとしての退化を嘆く記事を書きましたが↓
この記事を書く前後の頃から、彼らの最近の曲が魅力的に感じられない理由を多角的に見たいなと思っていました。
逆に言えば、私が「良い曲だ」と思った曲はどんなところが良くて魅力的に映ったのかを考えてみようと思いました。
というのも、最近の原因は自分にある。の曲は、曲そのものが魅力的でないのもそうだと思うんですが、歌ってるメンバーの声もあまり魅力的に聴こえなかったんですよね。
メンバーの良さが生かしきれてないと言いましょうか。
それはSUPER★DRAGONを降りた時にも思ったし、逆にM!LKやZeBRA☆STARを見てると曲もいいしメンバーの良さもしっかり出てるように思うから、どうしてそう思うのだろうと深く考えてみたいと思いまして。
要因はいろいろあると思うんですが、今回は思い当たった要因の1つとしてタイトルにも書いた、「アイドルは声が曲にちょっと馴染まないくらいがちょうどいい」説について語りたいと思います。
さて、まず「声が曲にちょっと馴染まない」ってどういうこと?と思う方もいると思うので、具体例をあげて説明します。
たとえば、M!LKの「君の知らない世界へ」。
これはM!LKには珍しい色気曲です。ライブではヴァンパイア衣装を着て色っぽく踊っていた姿や、メンバーが他のメンバーをベッドに押し倒すようなシーンも織り込んでいたところがありました。
なかなか攻めた曲のはずなんですが、あんまりいやらしく聴こえませんよね。
原因は自分にある。の「半分相逢傘」なんか気持ち悪くてしょうがなかったけど。
まあ、「半分相逢傘」が気持ち悪く聴こえるのは、歪んだ重い愛をテーマにしているのが大きいとは思うんですが、他にもメンバーの声質にも少し要因があると思ったわけです。
吉澤要人くんの歌声とか、結構生々しく感じますしね。
この曲聴いてるときに彼の歌声が聴こえるたび、私はこの曲聴き続けるのあきらめるレベルです。
要人くんに限らず、原因は自分にある。のメンバーの歌声って、しっとりとした色気のある声が多い気がします。
そんな声でエロ曲歌ったらそりゃ無駄なレベルでエロく聴こえるよね、良くも悪くも、ってところでしょう。
それに対してM!LKの歌声って、全体的に色気って感じの声ではないですよね。
山中柔太朗くんみたいな儚げな色っぽい声を出すメンバーもいなくはないんですが、他のメンバーはわりと溌溂とした声が多いので、全員で歌うとそんなに色気って感じは出ない。
色気曲のはずなのにそんなに色っぽい声じゃなく、むしろさわやかな声なんですよね。
「声が曲にちょっと馴染まない」というのは、そういうことです。
で、私はその「声が曲にちょっと馴染まない」くらいがちょうどいいんじゃないかってことを言いたいんですが、実際、M!LKの「君の知らない世界へ」の感じってちょうどいいなと思うんですよね。
色気曲のはずなのに色っぽく聴こえない。それがいいんです。
言い方を変えれば、変ないやらしさを感じさせないということですから。
エロをテーマにした曲をいやらしさを感じさせず歌えるということなので、ある意味M!LKは色気曲が「得意」と言える気がするんですよ。
逆に、原因は自分にある。のメンバーは、上でも書いた通り色気を感じさせる歌声のメンバーが多いんですよね。
吉澤要人くんもそうだし、小泉光咲くんとか杢代和人くんなんかもそう。長野凌大くんもそうかな…彼は微妙かもだけど。
他のメンバーに関しては、色気という感じともまた違うんだけども、でも溌溂とした声とまでは言えませんよね。武藤潤くんが若干そうかなくらいで。
だから、全体的に声の雰囲気がやや暗めで、色気もあるのが原因は自分にある。の声なのかなと思います。
そう考えると、彼らの声って「半分相逢傘」の雰囲気に合ってはいるんですよね。
でも、合いすぎちゃってるんですよ。
合いすぎちゃってるから、ただでさえ気持ち悪い曲がさらに気持ち悪く聴こえる相乗効果が起きてしまって、聞くに堪えない曲になってしまったんじゃないかな、と思ったり。
「声が曲にちょっと馴染まないくらいがちょうどいい」というのは、そういうことなんです。
まあ、「半分相逢傘」レベルの気持ち悪い曲だと仮にM!LKが歌ったところで普通に気持ち悪い曲にはなったと思いますけどね。
他にも例を出してみましょう。
M!LKの「It's only LOVE」。
これは大人の失恋を描いた曲になりますが、特に注目してほしいのがサビでの宮世琉弥くんのソロパート、「恋なんてもうしない/ごめん」。
この曲を出した当時の琉弥くんはまだ中学3年生の15歳でした。声変わりの過渡期でまだまだ可愛らしい声をしていた時期です。
そんな頃の彼が「恋なんてもうしない」なんて幼げな声で歌うわけです。エモくないですか?
これが、もっと年齢が上で声も大人っぽい佐野勇斗くんとかが歌ってしまうと、変にリアルになってしまって、冷めてしまうんだと思うんです。
でも、まだ15歳で声も可愛らしい、どう考えても大人の恋なんて経験してない琉弥くんが歌うからこそ、アンバランスな魅力が生まれてエモく感じられるわけです。
「あなたはまだ恋できるでしょうよ…!」って泣けてくると言いますか…
ちなみに、今は琉弥くんは卒業していていないので、パート割りも当然変わってるんですが、今では塩﨑太智くんがこのパートを引き継いでいます。
ここで、「え、そこは琉弥くんが抜けて最年少枠繰り上げになった曽野舜太くんが担当しないの?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
でも、私はこの引継ぎは正解だと思っています。
なぜなら、今の5人の中でいちばん幼げな声をしているのはどう見ても太智くんだから。
つまりは、ファンだけがわかるエモさじゃなくて、M!LKのことをあまり知らない人でも感じられるエモさを追求したんだと思うんですよね。
誰が聴いてもわかるアンバランスな魅力を選んだということです。
特にこのパートがエモいけど、全体的に見ても、すごく失恋で落ち込んだ感情を歌っているにもかかわらず、そこまで重苦しく聴こえなかったりする。
それはやっぱり全体的に溌溂とした声をしているM!LKが歌ったからですよね。
重苦しく聴こえないからスッと聴けるし、あんまり変な嫌味を感じないから、やっぱりM!LKはある意味でこういう負の感情を歌う曲が「得意」といえる。
これもまた、「声が曲にちょっと馴染まないくらいがちょうどいい」を体現しています。
これって、所謂「ギャップ萌え」を狙っているのかなと思うんですが、原因は自分にある。も、この戦略やってなくはないんですよね。M!LKとはちょっと方向性が違いますが。
どちらかというと曲の中身でギャップを作っていて、メンバーの声を使って何か狙おうとはしていない印象です。
最たるものが「ネバーエンドロール」でしょうか。
これが出た当時は私も普通にこの曲は好きだったんですが、最近この曲みたいな「曲調は明るめだけど歌詞は超切ない」って曲が増えすぎてて、「ちょっとこの曲アゲるのやめようかな」と思い始めてるほどです。
ちょっと運営も勘違いしてる気がするんですよね。
このギャップがウケたんだっていうのはそうだとは思うんだけども、原因は自分にある。の場合この戦略は多用しないほうがいいと私は思っています。
なんでかというと、メンバーの声質が、上でも書いた通り全体的に暗めだからです。
全体的に暗めだとなんでダメなの?と言われると、ちょっと考えてみてください。
M!LKは、全体的に明るめの声をしているから内容暗めの曲歌っても暗くなりすぎない、という話は上でもしました。
じゃあ、全体的に暗めの声をしている原因は自分にある。が内容暗い曲歌ったらどうなるよ?って話です。
当然、曲調が明るかろうが暗いほうに引っ張られてしまうんですよ。
だから、運営は暗めの歌詞を明るい曲調で相殺しようとしているのかもしれないけど、はっきり言って相殺しきれてないんです。
ギャップ萌えを狙ってるのかもしれないけど、ギャップどころか普通に切ないだけの方向に引っ張られてしまうんですよね。
結果的に、歌詞の雰囲気とメンバーの声質が合いすぎていて、見ててシラけちゃう。
たまに出される分にはギャップ萌えできるかもしれないけど、あんまり連続で出されすぎるとシラける。
原因は自分にある。がそういうギャップを狙うんだったら、むしろ逆にしたほうがいいと思います。
「曲調を暗めにして歌詞を明るめ」にしたほうがいい。
明るめというかトンチキというか。
初期曲なんかまさにそれでしたよ。
全体的に暗めでしっとりした声した子たちが、一見彼らに合ったダークな曲歌ってるかと思いきや内容はだいぶトンチキって、こっちのほうが断然面白いじゃないですか。
正直、M!LK以上に原因は自分にある。はトンチキ要素大事にしたほうがいいんじゃないかと私は思います。
そう、この「トンチキ」についても少し語りたい。
私は、もちろんM!LKにも「トンチキ」を大事にしてほしい派ではあるので、これからもそういう曲を出し続けてほしいなとは思っているんですが、M!LKの「トンチキ」って、聴く人によってはアホっぽく、幼稚に聴こえるところがあると思うんですよね。
上にあげた曲らは、「サンキュー!N・D・K!」以外は歌詞はトンチキではあるものの曲調やコンセプトはお洒落だと思うもの、「サンキュー!N・D・K!」はM!LKのコンセプトである牛乳について語った曲であることから引っ張ってきましたが、全体的にトンチキ色が強すぎて、全部どちらかというとアホっぽさが強いと感じられると思うんですよね。
M!LKって、全体的に溌溂とした声をしているから、少ししっとりした曲を歌う分にはしっとりしすぎずスッと聴けるような歌を歌えるんですが、トンチキのようなひたすらに明るい曲を歌うとどうしてもアホっぽく聴こえてしまうところがあると思うんです。
これは、逆にM!LKが「声が曲に馴染みすぎている」パターンだと思います。
でも、原因は自分にある。が、たとえばだけど「原因」って言葉について超真面目に語るような曲(結果としてトンチキ)を出したりとか、曲調お洒落で歌詞がトンチキな曲を歌ったとしたら、どうなるでしょうか?
多分、M!LKほどアホっぽさを出さず歌えると思うんですよね。
もちろん、曲を作るにあたっての音階の使い方とか、歌詞の言葉選びとかも重要だとは思うんですが、原因は自分にある。の場合、やや暗めでしっとりした声のメンバーが集まっているからこそ、トンチキな歌詞をアホっぽく感じさせずスッと入るように歌えるというところはあると思うんです。
ぶっちゃけ、「嗜好に関する世論調査」の歌詞の内容なんて「行けたら行くよ」と同レベルのことしか言ってないと思いますが、印象全然違いますしね。
あとは、「Joy to the world」。これは原因は自分にある。の曲の中でいちばんトンチキ色が強いと思いますが、やっぱりM!LKのトンチキ曲ほどアホっぽさは感じられない。
内容的には「MAGIC CARPET」と大差ないと思うんですけどね。
こうやって見ると、原因は自分にある。のほうがある意味トンチキが「得意」と言えるのではないでしょうか。
M!LKの「パッパラ・シュビドゥ・ヴァァァァァァァ」なんて、この曲のタイトルにもなっている「パッパラ・シュビドゥ・ヴァ」というフレーズに対しての愛を語る、という面白いコンセプトの曲なんですが、歌詞の言葉選びにこだわりを持ってそうな原因は自分にある。こそ、この着眼点はあってほしいし、そういう曲歌ったら普通にお洒落に仕上がりそうじゃありません?
そういうところを見ると、やっぱり原因は自分にある。なりの「声が曲にちょっと馴染まない」からこその魅力が出そうだな、と思ったり。
ここまでで語ったような、「エロ曲を色気ボイスで歌ってしまうと気持ち悪くなってしまう」とか、「トンチキを明るい声で歌うとアホっぽく聴こえてしまう」とかは曲に馴染みすぎる声で歌った場合の極端な例なので、すべての曲に当てはまるわけではありません。
でも、ここまでではなくても、曲に馴染みすぎる声で歌うと、そのメンバーの声の魅力が出なくなってしまう現象は起きると思っていて、「声が曲にちょっと馴染まないくらいがちょうどいい」説は、すべてのアイドル曲に対して当てはまると思っています。
たとえば、SUPER★DRAGONなんか思いっきり当てはまってると思います。
これは私の勝手なイメージですが、最近のSUPER★DRAGONってテクノポップ的な曲を出しているイメージがあって、お洒落でクールな曲といいますか、そういう曲が多いイメージがあるんですよね。
www.youtube.com↑これはもう今となっては最近でもないかもしれませんが。
多分、メンバー(特に池田彪馬くん)の声質的には、昔のヘビーロックよりも最近の曲のほうが合っているんだと思うんです。
でも、なんというか、合いすぎていて曲と声が一体化しすぎてしまっているというか。
メンバーの声があんまり際立って聴こえてこないんですよね。
www.youtube.com↑こういう熱いロック曲のほうが、特に彪馬くんの声のすごみというかなんというか、際立って聴こえて魅力的に聴こえる気がして。田中洸希くんもそうかも。
あとは、ONE N' ONLY/さとり少年団の永玖くん。
私はさとり少年団が好きでONE N' ONLYはあまり好きではないんですが、多分、永玖くんの声に合っているのはONE N' ONLYの曲のほうだとは思います。
www.youtube.comでも、さとり少年団時代の曲って、永玖くんの声らしからぬ曲だったからこそ、永玖くんの声の良さが出ていたような気がするんです。
www.youtube.com永玖くんって、「繊細」という言葉が似合う声質で、あんまり勢いがある声ではないと思うんですが、それでここまで勢いのあるロック曲を歌っていたというのが面白い。
こんな曲歌わなそうだからこそ、彼の声の良さをより感じられますよね。
最近はその繊細さを生かした歌ばかりを歌っているのかなと思いますが、やっぱり合いすぎていて曲と彼の声が一体化しすぎていて、彼の声が際立って魅力的には聴こえない気がします。
つまり、単純に曲と合いすぎている声って、曲を聴いたときにそのメンバーの声みたいに聴こえないんですよね。
曲に最初から入っている音みたいに聴こえてしまうというか。
そんな声が魅力的に聴こえるかどうかって言ったら、聴こえるわけないよね、という話です。
そういう意味でも、曲に声が馴染みすぎないほうがいいと言える。
ただ、「じゃあ馴染まなきゃいいのか」と言ったらそれはまたそうでもないんですよね。
馴染まなすぎてもそれはそれで違和感が生まれてしまう。
その最たる例が、ZeBRA☆STARに加入したばかりの頃の桑原柊くんだと思います。
最近は彼の加入後に作られた曲しかやらないので違和感はなくなってきているんですが、彼の加入直後で彼の声なんて当然全く考慮されず作られている曲しか歌ってなかった頃は、もう違和感バリバリでした。
ZeBRA☆STARのザ・可愛いポップな感じと柊くんのミュージカル仕込みの美しすぎる声は、全然合ってなかったんですよね。
↑の2:56でソロ歌うので聴けばわかると思いますが、さすがに合わなすぎです。
SUPER★DRAGONのボーカル勢がM!LKの初期曲歌ったらこういう違和感出るだろうな…って感じの違和感がありますよね。
だから、変な冒険はしなくていいけど、上手くメンバーの声の魅力が出るような塩梅を見つけるのが重要である、というところです。
ZeBRA☆STARは実際、柊くんが入ってきてからは彼の声もある程度馴染むように、しかし元の明るくポップな雰囲気もしっかり保てるような路線に上手く調整していました。
これらの曲も、柊くんの声質に合わせすぎない良い塩梅の曲調なんですよね。
他のメンバーももちろんそれぞれの良さは出ていますが、柊くんもまた曲中で絶妙な存在感を放っています。
そういう塩梅が大事ってことですね。
ここまで私が語ってきたことは、共感できないという人もいると思います。
「曲に声が馴染んでいるほうがいいじゃん」って人もいるだろうなとは思います。
ただ、知っておいていただきたいことは、私がこういう「声が曲にちょっと馴染まないくらいがちょうどいい」という意見を持つ背景というか、前提の考え方として、「アイドルはメンバーの個性が際立ってナンボ」というものがあります。
だから、声が曲に溶け込みすぎちゃうとなんだかなあ…と思うところがあるし、今回の話の趣旨とは少しずれますが、似たような声のメンバーが集まっているよりも全然違う声のメンバーが集まっているグループのほうが好きだったりする。
よって、こういう考えとは反対の考えを持っている方には、この記事で書いてきたことには共感できないかもしれません。
そもそもEBiDANはアイドルじゃねえよ、と思っている方もいるかもしれませんしね。
まあ1つの考え方ではありますけども。
個人的には「アイドルが声が曲にちょっと馴染まないくらいがちょうどいい」と思ったお話でした。
今回は「声が曲に馴染むかどうか」という観点で語ってきましたが、最近の原因は自分にある。のメンバーの歌声が魅力的に聴こえないと思った要因は、他にもあると思います。
それについては、また別の機会に。